伸び続けるニッチ市場 カールコードの新たな可能性 変わらない価値と、進化する役割

カールコードは古くから存在する製品ですが、その本質的な価値は現在も変わっていません。螺旋状の構造によって伸縮性と耐久性を両立し、余長を自動的に吸収できるという特性は、可動部を持つ機器が存在する限り必要とされる機能です。電話機用途のイメージが強い製品ではありますが、実際には産業機器、FA装置、医療機器、店舗設備、可動家具など、幅広い分野で使用され続けています。AIやロボットが普及する時代においても、この構造的価値はむしろ再評価される可能性があります。

取り扱い製品として、長岡特殊電線の汎用カールコードに加え、沖電線のロボットケーブルをベースにした高耐屈曲カスタムカールコードを展開していることは、市場環境の変化に対して非常に合理的なポジションにあります。汎用品は店舗設備やOA機器、軽負荷用途などで安定的な需要がありますが、今後の成長余地がより大きいのは高耐久仕様や用途特化型のカスタム品です。その理由は、機器の高度化が進むほど可動部の動作条件が厳しくなり、標準品では対応できない場面が増えていくためです。

協働ロボットや小型自動化設備の普及は、その代表的な例です。人手不足を背景に中小製造業でも自動化投資が進んでいますが、すべての可動部にケーブルベアを採用するほどのストロークや負荷があるわけではありません。短い往復運動や限られた可動範囲であれば、軽量で柔軟なカールコードの方が設計自由度やコスト面で有利になるケースがあります。また、設備の小型化が進むほど配線スペースは限られます。余長を自然に吸収できる構造は、省スペース設計との親和性が高く、装置内部の整理や安全性向上にも寄与します。このように、装置の小型化と高機能化という二つのトレンドが、カールコードの採用機会を支えています。

医療および介護分野も、今後安定した需要が見込まれる領域です。高齢化の進展により、昇降式診療チェア、リハビリ支援機器、在宅医療機器など可動機構を備えた装置は増加傾向にあります。この分野では無線化よりも安全性と信頼性が優先されます。高出力を必要とする機器や長時間連続稼働を前提とする装置では、有線給電の確実性が依然として重視されます。さらに、床面に余分なコードを這わせないことは転倒事故防止にもつながり、医療施設における安全対策の観点からも合理的です。伸縮機構により余長を吸収できる構造は、美観維持と安全確保の両立という点で明確な優位性を持っています。

EVやバッテリー関連設備も注目すべき分野です。電動化の進展に伴い、整備設備や検査装置、評価装置の需要が拡大しています。これらは比較的高電流を扱うケースが多く、完全無線化は技術的にも安全規格上も現実的ではありません。短距離で繰り返し接続や可動を行う装置では、伸縮性と耐屈曲性を備えたカスタムカールコードの適用可能性があります。特にロボットケーブルをベースにした仕様であれば、反復屈曲や捻回に対する耐久性を確保しながら、設計上の自由度を高めることができます。

オフィスや住宅分野においても、昇降デスクや可動家具の普及が定着しつつあります。テレワークの広がり以降、電動昇降機構は一般化しましたが、配線処理は依然として課題です。配線が垂れ下がることによる美観の低下や断線リスクは、製品価値に直結します。伸縮構造により自然に余長を吸収できるカールコードは、意匠性と機能性の両面で合理的な選択肢となります。こうした分野は爆発的な成長市場ではありませんが、一定規模で安定的に継続する可能性が高いと考えられます。

将来をより長期的に見た場合、市場は量的拡大よりも質的分化へ進むと予測されます。無線技術やバッテリー性能の向上によって一部用途は置き換えられる可能性がありますが、高電流用途や安全規格対応機器、産業用途の長時間連続稼働設備では有線給電が不可欠です。さらに、AI化が進むほどセンサーや小型アクチュエータは増加し、結果として可動部の配線数は増える傾向があります。つまり、無線化の進展と同時に、有線の高信頼用途が残存するという二極化が進むと考えられます。

この構造変化の中で重要になるのは、用途に最適化されたカスタム仕様です。電源と信号を組み合わせたハイブリッド仕様、シールド付き高信頼タイプ、耐油や耐薬品、低発塵などの特殊環境対応といった要求は今後も増える可能性があります。標準品では対応できない仕様へのニーズは、装置の高度化とともに拡大します。ロボットケーブルをカール加工するという発想は、可動と伸縮を同時に満たす提案であり、差別化要素として有効です。

カールコードは目立つ製品ではありませんが、物理空間で機械が動く限り必要とされる基盤部材です。完全な無線社会が実現する可能性は限定的であり、高出力、安全性、信頼性という三つの観点から有線の役割は残り続けます。今後は汎用品の大量供給市場よりも、用途特化型の高付加価値市場が中心になると考えられます。汎用品と高耐久カスタム品の双方を扱える体制は、この変化に対応する上で大きな強みとなります。ニッチであることは縮小を意味するものではなく、むしろ専門性を発揮できる市場であるという視点が、今後の展開を考える上で重要になります。